ネット上では、「SESで働くのはやめとけ」といった否定的な意見が少なくありません。
こうした意見を目にしたことで、「SES企業に就職してもいいのか悩んでいる」という方も多いのではないでしょうか。
そもそも、なぜ「SESはやめとけ」と言われてしまうのか、その理由も気になるところでしょう。
そこでこの記事では、SES企業に就職するのはやめとけと言われる10個の理由や、優良なSES企業の見分け方などについてわかりやすく解説していきます。
開発会社を経営すると同時に、Web系エンジニア向けのプログラミングスクール「RUNTEQ」を運営する弊社ですので、業界の内情には精通しています。
SES業界について詳しく知りたい方は、是非この記事を参考にしてください。
SESはやめとけと言われる理由11選

GoogleなどでSESについて検索すると、「やめとけ」「闇が深い」などと否定的な言葉が出てきますが、いったいなぜでしょうか?
SES契約を通してITエンジニアを雇用する企業が多い中、ネガティブな言葉が多くあるのには、以下の11個の理由が挙げられます。
- 多重請負構造により給料が安くなりやすい
- 適切な教育が受けられない
- 指揮命令権の所在が曖昧になりやすい
- 人間関係の変化が多い
- 案件ガチャによりスキルアップしにくい
- 下流工程の仕事が多くサービスが見えない
- 帰属意識が低下しやすい
- 不当な残業が発生することも少なくない
- 常駐先に当たりハズレが大きい
- 正当な評価をしてもらえないこともある
- エンジニアとは無関係な仕事をさせられ開発経験が積めない
SESはどちらかというと、このようなデメリットが目立つ働き方でもあるため、就職を考えている人は事前に把握しておくことをおすすめします。
多重請負構造により給料が安くなりやすい
「SESで働くのはやめとけ」と言われてしまう大きな理由として、多重請負構造によって給料が低くなりやすいというものがあります。
A社がB社に仕事を依頼した際に、B社からC社へ、C社からD社へ、という形でどんどん下請けの階層が深くなっていく構造。
多くのSES企業がSIer企業の下請けになっているため、SIerに比べて給料が低くなる傾向があります。
特に多重請負構造の場合、元請け⇒2次請け⇒3次請け、といった上層での下請けが重なるほど中間マージンなどのコストがかかることで、下層のSES企業の実入りが少なくなり、その結果エンジニアに支払われる報酬も少なくなってしまうのです。
また、SES契約は労働時間に対して報酬が支払われるため、成果物の質が良くてもインセンティブが発生しないのが特徴です。
こういった点も、給料が低くなりやすい理由の一つです。
適切な教育が受けられない
SES企業の場合、業務をこなすために必要な知識やスキルについての教育を受ける機会がないことも多いです。
未経験者や経験が浅い人であれば、事前に指導を受けたいところでしょうが、基本的には研修や指導がないまま、常駐する現場へと送られます。
なぜそうなってしまうのかというと、教育コストをかけるほどの余裕がないSES企業が多いからです。
研修制度を整え、社員を育てていくためには、時間もお金も必要になります。
しかし、前述した多重請負構造の下層にいるSES企業にはそのような余裕がなく、即戦力として社員を客先へ派遣するしかないのです。
そして客先常駐のため、自社の上司から指導を受ける機会も少ない、もしくはほとんどないという状況になりがちであることも、教育不足の状態に陥りやすい理由です。
指揮命令権の所在が曖昧になりやすい
指揮命令権の所在が曖昧になりやすいところも、「SESはやめとけ」と言われてしまう原因です。
SES契約の内容に則ると、派遣されたSESエンジニアに対する指揮命令権はベンダー側にありますが、ときにクライアント側が指示を出しているケースも見受けられます。
もちろんこれは法令に違反する行為にあたりますが、証拠として残りづらいため、あやふやにされてしまうのが問題です。
指揮命令権のことを知らなかったり、知った上で「仕方がない」「そういうものだ」と諦めていたりするエンジニアも多いのが実情で、違法な残業や休日出勤などの温床になっています。
ブラックなSES企業に就職してしまうと、契約内容にそぐわない対応をせまられる可能性があるため、違法な残業や休日出勤などについて、少なからず覚悟する必要があると言えるでしょう。
人間関係の変化が多い
案件や契約ごとに職場環境が変わるため、人間関係の変化がストレスになることもあります。
どんな現場でもすぐに順応できる方ならば問題ないかもしれませんが、人見知りだったり、新たな環境に馴染むまで時間がかかったりするような方には向いていない働き方と言えます。
「やめとけ」と言われる一番の理由ではないですが、たびたび職場環境が変化する可能性があることは覚えておくとよいでしょう。
案件ガチャによりスキルアップしにくい
SES企業で働く場合、システム開発の下流工程を担うことがほとんどなため、スキルアップしにくいのが特徴です。
「どんどん新しいことに挑戦していきたい」と考えているエンジニアの方も多いと思いますが、SES企業ではどちらかというと安定した技術を求める傾向にあるため、新しい技術を取り入れていきたい方には少々物足りない可能性があります。
時には開発経験が積めない案件をあてがわれてしまうこともあるため、「案件ガチャ」と言われるほどです。
案件ガチャについては、『SESの案件ガチャを抜け出す方法』で解説しています。
下流工程の仕事が多くサービスが見えない
下流工程の作業が多いためサービスの全体像が見えづらく、やりがいを感じづらいのも、SESの闇の部分と言えます。
SES企業に仕事が依頼される流れとしては、以下のような順番になります。
- 大手SIerがプロジェクトを受注し、業務を細分化して中堅企業に割り振る
- 中堅企業がさらに細分化し、中小企業へ業務を割り振る
- 中小企業であるSES企業が割り振られた業務を遂行する
このように多重請負構造になっていることが多いため、プロジェクトの部分的な内容しか分からないケースがほとんどです。
また、契約期間によってはプロジェクトの途中で終了になったり、担当業務が終わればシステムの完成を見ずに次の契約に移ることもあります。
エンジニアとして経験を積み、上流工程を担いたい人は、特にやりがいを感じづらい傾向にあるため、SESはあまりおすすめされません。
帰属意識が低下しやすい
自社に対する帰属意識が低下しやすいのも、SESのデメリットと言えます。
SES企業の場合、客先に常駐して働くことが基本であるため、月に一度程度の定例会や面談のときしか自社に戻らないといったケースが多くあります。
そのため、自社の経営理念や方針に合わず、転職を繰り返す人も少なくありません。
会社に属して同じマインドを持った人たちと働きたい方には向いていないと言えるでしょう。
不当な残業が発生することも少なくない
SESはブラックだからやめとけと言われる理由の一つに、不当な残業が発生することも珍しくないことが挙げられます。
SES契約は労働時間に対して報酬が支払われるため、本来ならば働く時間に制約があり、残業が発生しにくい働き方です。
しかし、クライアント側がSES契約の仕組みをあまり理解していなかったり、理解した上で意図的に「指揮命令権のことをよく知らないSESエンジニア」を都合よく使ったりして、する必要のないサービス残業や休日出勤を強要されるケースもあるのです。
常駐先に当たりハズレが大きい
プロジェクトや常駐先には当たりハズレがあるため、ハズレを引いてしまった人はあまり良い思いをしないでしょう。
当たりかハズレかは、案件内容の良し悪しだけでは決まりません。
業務に不満がなくとも、人間関係が劣悪であったり、参加時に既に納期が迫っていたりといった「労働環境が悪いこと」や「自分とは合わないこと」もあります。
プロジェクトに配属される際は営業担当と面談がありますが、雰囲気や状況は実際に入ってみないとわかりません。
これも、「SESはやめとけ」と言われてしまう原因です。
正当な評価をしてもらえないこともある
「クライアントの現場で業務に従事する」という働き方になるSESエンジニアは、自社から正当に評価してもらえないことも多いです。
クライアントからの評価が自社に伝わったり、定期的に上司がヒアリングに来たり、ということはあったとしても、それだけで自分の努力や成果が正確に伝わるかどうかは怪しいでしょう。
自社開発企業や受託開発企業のように、自社のエンジニアでチームを組んで働いている場合には、努力も成果も周囲に伝わりやすく、正しい評価を受けやすくなります。
しかしSESエンジニアの場合、客先常駐という働き方になるため、正当な評価をしてもらえないことがあるというデメリットがあります。
エンジニアとは無関係な仕事をさせられ開発経験が積めない
最後になりますが、「やめとけ」と言われる最たる理由は、「エンジニアとして入社したはずなのに、気付けばエンジニアと関係のない仕事をさせられている」ということも存在するからでしょう。
- コールセンターでのテレアポ
- 携帯ショップの受付
- ウォーターサーバーの営業
入社時には一切の説明がなかったのにもかかわらず、上記のような「エンジニアとは無関係な現場」に派遣されてしまう、ということが現実に起こっているのです。
当然ながら、これでは開発経験の積みようがありません。
エンジニア側が「IT関連の現場に派遣してほしい」と主張しても、「今は案件がない」「まずはIT関連の資格を取ってから」などと言われ、取り合ってもらえないこともあります。
また、コールセンターやテレアポといった「エンジニアとはかけ離れた仕事」ではないにせよ、「ヘルプデスク」や「テスター」など、開発経験とは言えないような現場に長く常駐させられるリスクもあります。
避けるべきブラックなSES企業の特徴

ここまで、「SES企業に勤めるのはやめとけ」と言われる理由について紹介してきましたが、上記の理由の多くが「ブラックなSES企業」に該当することです。
SESの中にも優良企業が多く存在するため、ブラックなSESを避ければ問題はないわけです。
ブラックなSES企業には、主に以下のような特徴がありますのでご注意ください。
- 多重下請けの下層にいる
- 経歴詐称を要求してくる
- 未経験者に対して研修を実施しない
それぞれ、詳しく解説していきます。
多重下請けの下層にいる
多重下請けの下層に位置する会社の場合、上流工程企業による度重なる中抜きよって、入ってくるお金がかなり少なくなってしまいます。
SES業界では、4次請け、5次請けといった構造は当たり前のように存在する上、場合によっては6次請けや7次請けにまで下っていくこともあるのです。
下層にいるSES企業に就職してしまうと、給料には期待できません。
案件を自由に選ぶこともまずできないため、低い給料でスキルアップに繋がらない仕事をこなし続けるような境遇に陥ってしまうリスクがあります。
その会社が「多重構造のどの位置にいるのか」は、外部からは掴みにくいので、面接の際にしっかり確認しておくようにしましょう。
経歴詐称を要求してくる
案件によっては、実務経験や保有スキルについての要求レベルが高いケースもあります。
当然ながら、スキルや経験が足りていなければ案件にアサインできません。
こういった場合に、エンジニアに対して経歴を詐称するように要求してくるようなSES企業は、間違いなくブラックだと言えます。
例えば、実際はPythonの経験が2年しかないのに、「SES面談では5年の経験があると主張してほしい」と依頼されるようなケースです。
SES企業側としては、エンジニアを派遣できなければ売り上げにならないため、自社の都合のみを優先し、手段を選ばず「自社エンジニアの経歴詐称」を行うこともありますのでご注意ください。
未経験者に対して研修を実施しない
実務未経験者を採用しておきながら、社内研修やOJTといった取り組みを一切行わず、いきなり現場に派遣するというブラックなSES企業もあります。
SES企業側は、派遣さえしてしまえば売上になるため、エンジニアのスキルを考慮せず適当な案件へ振り分けるというブラックな企業も存在するのです。
何も知らない状態でいきなり客先に放り込まれてしまった未経験エンジニアは、精神的にも肉体的にも疲弊していく可能性があるでしょう。
「エンジニアは自主的に勉強し、何事も自己解決が基本である」と考える人も多いでしょうし、実際にその通りなのですが、未経験の段階ではある程度のフォローが必要なことも少なくありません。
未経験者に対する支援体制がどうなっているかについても、入社前にきちんと確認すべきです。
優良ホワイト企業を見分けるコツ

SES企業は、ブラックな企業ばかりではなく、ホワイトな優良企業も多く存在します。
優良なSES企業への就職を希望する場合は、以下のような点に注意して見分けるようにしてください。
- 案件選びが可能か
- 会社の評判はどうか
- 福利厚生は充実しているか
案件選びが可能か
SESという働き方においてネックになるのが、「どんな案件を担当することになるかわからない」という点です。
例えば、ほとんどスキルが身に付くことのない「テスター」や「ヘルプデスク」といった役割を与えられてしまうと、その期間はエンジニアとして無駄な時間を過ごすことになってしまいます。
したがって、派遣される現場についてある程度自分の意見が考慮されるかどうかは大変重要になってきます。
この点は、面接時に逆質問をしてしっかりと確認しておきましょう。
会社の評判はどうか
企業の規模にもよりますが、一定以上の規模があれば、現在働いている社員や以前働いていた社員たちの口コミを読める可能性が高くなります。
- SNS
- Google口コミ
- 企業の口コミを投稿できるサイト
こういった場所で口コミを探せる場合があるので、気になるSES企業があれば調べてみましょう。
どういった現場に派遣されることが多いか、どんな人たちが働いているか、といったことがなんとなく伝わってくるはずです。
福利厚生は充実しているか
企業に属する以上、福利厚生の充実度を意識することも大事です。
残業代の扱いや研修制度、その他各種手当などについても事前に調べておきましょう。
これらの情報は、会社の公式HPで確認できることも多いです。
特に残業代についてはしっかり確認すべきです。
「みなし残業」といって、残業しようとしまいと、一定の残業代が毎月固定で支払われる形なのですが、SES業界ではみなし残業制となっている場合も多いです。
みなし残業代を超える労働はすべてサービス残業となってしまいますので、働いた分の報酬はきっちり受け取れるのかどうかの確認も怠らないでください。
SES企業で働くメリット

否定的な意見が多いSESですが、いくつかメリットも存在します。
- 未経験でも正社員として採用されやすい
- 大きなプロジェクトに関わる機会がある
- 職場環境に変化がある
未経験でも正社員として採用されやすい
SES企業は未経験者でも就職しやすいのが特徴です。
経済産業省の報告によると、ITエンジニアの7割がSESやSI企業に勤務していると言われています。
SES業界は慢性的な人材不足でもあり、未経験・学歴不問で募集されることもあります。
どんな形でもいいからすぐにエンジニアとして働きたい、という方は、SES企業にメリットを感じられるでしょう。
大きなプロジェクトに関わる機会がある
SES企業で働くことで、新卒では関われないような大企業のプロジェクトに携われる可能性があります。
もしそういった機会に恵まれることがあれば、一社員として大きなプロジェクトに関われるため、業務を通して多くのエンジニアや企業の方とつながりが持てるかもしれません。
コネクションを利用して転職活動を効率よく進めたり、将来のキャリアアップにつなげたりと人脈を広げるチャンスでもあります。
職場環境に変化がある
案件や契約終了にともない働く環境が変わるのも、人によってはメリットに感じられるでしょう。
SES契約はプロジェクトの進行に関係なく、あらかじめ決められた期間が過ぎれば契約も終了になるため、人間関係が固定化されないのが特徴です。
勤務先が変わるたびに新しいスタッフと関わるため、多くの人と関わりたいという人にはSESエンジニアという働き方がマッチしていると言えます。
SESに向いている人・向いていない人の特徴

SESに向いている人の特徴としては、ズバリ「適応能力の高い人」と言えるでしょう。
定期的に変化する環境に慣れ、業務を遂行する能力が求められるため、様々な面において適応できる人が向いていると言えます。
反対に向いていない人の特徴として以下の5つが挙げられます。
- 環境の変化がストレスになる人
- スキルアップしたい人
- 稼ぎたい人
- 上流工程を担いたい人
- やりたい仕事がしたい人
未経験者でも採用されやすいというメリットがあるSES企業ですが、実際には開発経験を積むことが難しいため、SES企業で実務経験を積んでも転職時に役立たないことが多いです。
「とりあえずSESに行け」と言う人もいるかもしれませんが、将来性を考えるのならば、よほどの理由がない限りは自社開発企業や受託開発企業を選択することをおすすめします。
SESで経験を積んでからWeb系エンジニアへ転職するのはNG

そんなことはありません。
SES企業の働き方や給料事情などをすべて理解した上で、「SESでエンジニアとしてやっていきたい!」と考えているのならば、SESへ就職するのもよいでしょう。
しかし、自社開発企業や受託開発企業でWeb系エンジニアとして働きたい場合は、最初からそういった企業への就職を目指すべきです。
なぜならば、「スキルアップが期待できない案件」や「そもそも開発経験とは言えない案件」に従事することも少なくないSESエンジニアの場合、スキルを重視されるWebエンジニアの求人においてまったく評価されないことも多いからです。
SESでの経験がWeb系エンジニアに活かされない理由は、以下の記事にまとめてありますので是非ご覧ください。

「そうは言っても、未経験だとSES企業しか採用してくれないから・・・」
このような不安を感じている人もいるかもしれません。
しかし、確かなスキルを身に付け、採用担当者をうならせるようなポートフォリオを作ることができれば、未経験であろうと、自社開発や受託開発を行っている会社への就職も充分に可能です。
未経験の状態から本気で開発企業への就職や転職を考えている場合には、弊社が運営する「RUNTEQ」のような、未経験からのエンジニア転職に強いプログラミングスクールの利用を是非ご検討ください。
まとめ
以上、「SES企業は闇が深いからやめとけ」と言われる理由を中心に解説しました。
SESはクライアント側とベンダー側の両方に需要があり、未経験者でも正社員になることができるため、最初に目指すところとして扱われやすいです。
しかし、スキルアップしにくく開発経験も積みづらいといったケースもあるため、開発企業でエンジニアとして働くための踏み台的立ち位置にはなりません。
もちろんホワイトなSES企業もあるため、どうしてもSESで働きたいという場合には、入念な下調べをしてブラックな企業ではないかどうか確認しておくようにしましょう。
- SESはクライアントにエンジニアを派遣し、特定の業務に対して労働力を提供するサービスである
- 労働時間が管理されているなどのメリットがある一方、契約に反する行為が見受けられる点でSESはブラックと言われることもある
- SESでの経験はWeb系キャリアへ活かされないため、踏み台にはならない
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