「リスキリングとは何? リスキリングとリカレント教育の違いは?」
「リスキリングを導入するメリットは?」
これから業務の効率化を図ろうとしている企業の担当者様の中には、社員の学び直し、いわゆる「リスキリング」に興味を持つ方も多いでしょう。
また、似たような意味を持つ「リカレント教育」との違いを知りたいとお考えの方もいらっしゃるかと思われます。
そこでこの記事では、リスキリングがどういうものかといった解説から、リカレント教育との違い、リスキリングによるメリットなどについて、詳しく紹介していきます。
リスキリングとは?
最近よく耳にするようになった「リスキリング」について、詳しく解説していきます。
リスキリングとは何か
リスキリング(Re-skilling)とは、DX化に対応した業務をこなす上で新たに必要となった知識やスキルについて、企業側が従業員に対して教育することです。
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、一言で表すと「デジタル化による業務改革」です。
DX化することで、アナログな作業から脱却でき、業務の大幅な効率化を図ることができます。
しかし、業務だけをDX化しても、DX化した業務内容に対応できる人材がいなければ意味がありません。
かといって、デジタルに強い人材を新たに登用して、アナログな作業しかできない社員はすべて解雇する、というわけにもいきません。
会社の規模によってはとてつもないコストがかかりますし、そもそも大事な社員を乱暴な形で切り捨てるというのはあまりに非現実的です。
そこで重要になってくるのがリスキリングです。
社内のリソースを活かすために、社員に対してデジタル化された業務に対応できるように教育することで、採用コストをかけずに既存の社員たちも守ることができます。
リスキリングの浸透度
ここ数年で急速にリスキリングという言葉が浸透し始めています。
それは、Googleの検索件数を見ても明らかです。
■画像引用:リスキリングとは – 経済産業省
こちらは経済産業省が発表しているデータですが、ご覧の通り急激に検索数が上昇しています。
リスキリングが注目されている理由
リスキリングの注目度が上がっているのは、「世の中のDX化がどんどん進んでいる」ということが最も大きな理由です。
実際、2020年に開催された世界経済フォーラムの年次総会、通称「ダボス会議」で、「リスキリング革命」が発表されました。
こちらは、2030年までに10億人に対して、第4次産業革命に伴う技術変化に対応した新しいスキル獲得のための教育や仕事を提供する、という趣旨の宣言です。
その他、国内外を問わずリスキリングについて話題に上がることが増えています。
また、新型コロナウイルスの蔓延によって働き方が大きく変わったということも影響しているでしょう。
コロナによってリモートワークが増えたのは周知の事実ですが、リモートなどの多様な働き方を実現するためにはDX化は避けられません。
これらの理由から、すでにリスキリングを導入している企業や、今後導入を検討している企業が増えているのが現状です。
国によるリスキリング支援も決定
2022年10月の岸田総理の所信表明で、以下のような発表がありました。
第210臨時国会が3日召集された。岸田文雄首相は衆院本会議で所信表明演説し、個人のリスキリング(学び直し)の支援に5年で1兆円を投じると表明した。
政府としても本気でリスキリングを支援していこう、という姿勢が伝わってきます。
こうした事実からも、今後さらにリスキリングが活発化していく可能性は非常に高いでしょう。
リカレント教育とは?
リカレント教育とは、「生涯学習」とも言われるもので、個人が自発的に学びたいことを自由に学び、今後の仕事に必要とされるスキルを磨いていく学習のことです。
会社を休職したり退職したりした後、自分が身に付けたいと思っているスキルについて学習できる教育機関に通い、勉強する形となります。
リスキリング同様、リカレント教育についても国が推進しているため、給付金制度もあります。
条件を満たすことで、最大70%の還付を受けられる「教育訓練給付金制度」などがあるため、うまく活用しながら費用を抑えて学ぶことが可能です。
リスキリングとリカレント教育の違い
どちらも「学び直し」という意味で使われる「リスキリング」と「リカレント教育」ですが、両者には明確な違いがあります。
リスキリングとリカレント教育の違いは、主に以下の2つです。
- 会社主導か、個人主導か
- 働きながら学ぶのか、休職や退職をしてから学ぶことに専念するのか
まずは、会社主導で従業員に学習させるのか、個人が自らの意志で新しいスキルを身に付けようとしているのか、という点で違いがあります。
リスキリングの場合は、会社の業務に沿ったスキルを会社主導で従業員に学んでもらう、という形になりますが、リカレント教育は、個人が今後のキャリアなども考えながら自由に学ぶことを選べます。
また、リスキリングは「働きながら学習する」のに対して、リカレント教育の場合は「一旦仕事を辞めるか休職してから学習に専念する」のが一般的である、という点も大きな違いです。
企業側の視点から考えますと、従業員が一旦会社を休職し、リカレント教育として個人のスキルを伸ばしたことで、より条件の良い会社へ転職されてしまうというリスクもありますが、リスクだけではありません。
頼もしい人材となって戻ってくることもありますし、自由な学びの機会を与えてくれた会社に恩義を感じて長く会社に残る人材になってくれることもあります。
学び直すという点では同じでも、リスキリングとリカレント教育には上記のように決定的な違いもありますので、それぞれの特性を踏まえながら、どちらを自社に導入すべきか検討するのがよいでしょう。
企業がリスキリングに取り組むメリット
リカレント教育制度を取り入れている企業もありますが、DX化に対応する人材を育てたいという目的を達成する場合は、リスキリングに取り組む企業の方が一般的と言えるでしょう。
この項目では、企業がリスキリングに取り組むメリットについて解説していきます。
業務効率が良くなる
DX化によって今まで人が手作業で行っていた業務が自動化されるため、企業がリスキリングを導入することでDX化された作業に対応できる従業員が増え、従来よりも作業効率が大幅に上がります。
業務効率が上がったことで、浮いた人材を他の部署で活用することも可能となるため、社内における人材の流動化にも期待できます。
人材採用コストが不要
もしリスキリングを導入していなければ、デジタル化された新たな業務に対して既存の従業員たちが対応することは難しいでしょう。
従って、改革が行われた業務システムに対応できる人材を雇う必要が出てきてしまいます。
しかしリスキリングによって既存の従業員たちの教育が行われていれば、新たに人材を採用する必要はありません。
無駄な採用コストをかけずに済むわけです。
また、外部からの採用をすることで、社内事情がわかっていない人に対して事業内容のキャッチアップの時間も必要になります。
社内のことをよくわかっている社内の人材をリスキリングする方が、外部から採用するよりもコストを抑えられるということです。
従業員のモチベーション向上に繋がる
人は、成長を実感できると喜びを感じることが多いです。
リスキリングとして教育を施した従業員たちが、デジタルな業務に対応できるようになった時には、新たに身に付けられたスキルにポジティブな感情を抱き、業務に対してのモチベーションが上がることが期待できるでしょう。
仕事へのモチベーションが上がれば、成果へと繋がる可能性も高くなります。
人材流出を防げる
リスキリングによって、社内業務のDX化に対応できるようになったことで会社に居場所ができ、長く働き続けてくれる人材を増やせる可能性が高まります。
頻繁に社員が入れ替わってしまう会社よりも、社員の定着率が高い方が会社にとってプラスなのは言うまでもないことでしょう。
同じメンバーで長く働くことによってコミュニケーションが深まり、より仕事が円滑に進みやすくなります。
また、社員の定着は「企業文化の継承」に役立つという点も見逃せません。
リスキリングの導入方法
リスキリングを導入する際の大まかな流れは、以下のようになります。
- 自社の事業や業務改革内容を正確に把握し、従業員にどんなスキルを身に付けてもらうか検討する
- リスキリングのためのスケジュールを決める
- リスキリングに用いる教材を選ぶ
- 従業員に取り組んでもらう
- 身に付けたスキルを現場で活かしてもらう
特に「3.」の教材選びは重要です。
この工程で、自社の事業内容に適さない教材や、いきなり難易度の高い教材を選んでしまうと、リスキリングの効果を得にくくなってしまいます。
どんな教材をリスキリングに取り入れるかについては、慎重に吟味すべきでしょう。
なお、実務に繋がるプログラミング研修をお考えの場合は、是非「RUNTEQ Business」をご検討ください。
開発現場が未経験の方に求めるスキルを詰め込んだ研修内容となっており、アプリケーションの開発だけでなく、開発タスクができることに重点を置くことで教育担当の負担を徹底的に減らし、戦力としてカウントできる状態を目標に教育できるカリキュラムとなっています。
リスキリング導入時の注意点
企業にとって、今後も重要性が高まってくると予想されているリスキリングですが、ただ導入すればいいというわけではありません。
導入する際には、以下のような点に注意するようにしてください。
事前にリスキリングの重要性を社内に浸透させる
リスキリングに限らずどんなことでもそうですが、意味もわからないまま「とにかくこれを学べ」と言われてもモチベーションは上がりません。
従って、DX化した業務について学習する必要性や、それによって今後どんなメリットがあるのか、といったことについて丁寧に説明していく姿勢が重要となります。
学習環境に配慮する
従業員の中には、急な変化にも対応できるタイプから、すぐには変化に追いつけないタイプなど、いろいろな人がいるはずです。
こうしたことも考慮し、最初からいきなり難しいことを押し付けたり、「いついつまでにここまでのスキルを身に付けるように」と強制したりすることは避けた方がよいでしょう。
まずは易しい内容から入り、徐々に高度なスキルを身に付けてもらえるようなカリキュラムにするなど、従業員たちが無理なく学習できる環境作りを意識することが重要です。
最近では国がリスキリングを推奨しており、助成金を出している研修も存在します。
リスキリング研修を実施することで、従業員のスキルの「底上げ」
自発的に取り組める仕組み作りを意識する
学習に対して前向きな従業員ばかりではないため、インセンティブを付与するなど、意欲を持って学んでもらえるための仕組み作りについても考慮すべきです。
教育コストはかかるものの、長い目で見れば会社としてプラスになる可能性が非常に高いため、積極的に取り組むべきです。
前述した通り、国としてリスキリングのための支援も公表されているため、そういった制度を利用するのも効果的でしょう。
リスキリングに取り組む企業の事例
すでに、リスキリングに取り組んでいる企業は数多くあります。
ここでは、その代表的な事例について紹介していきます。
日立製作所
日立では、2019年からグループ全体でデジタル教育に力を入れ始め、社内教育を担っていた3つの研修機関を統合して「日立アカデミー」を発足させました。
約100コースのデジタル専門研修を取り入れており、国内グループ企業の全社員である約16万人を対象に、DX基礎教育を実施しています。
特に、部下のリスキリングを導く管理者層の強化を意識していて、リスキリングという概念がなかった上の年代に対してどう再教育していくかについて意識しています。
富士通
富士通では、2020年4月から、社内ポータルサイトとして「Fujitsu Learning EXperience(FLX)」を大幅にリニューアルし、社員のリスキリングを促進しています。
内容としては、ITスキルからビジネススキルまで幅広く受けることができ、2022年2月現在では9600ものコースを受講することができます。
学習状況はダッシュボードで可視化され、月に一度、上司と1対1で学習目標を達成できたかどうかについてのフィードバックを受けることができます。
サイバーエージェント
サイバーエージェントは、2021年より、変化していく技術トレンドに対応したエンジニアの学びやキャリアアップを行う組織として「リスキリングセンター」を発足しました。
業務をこなしているだけでは身に付きづらいプログラミング言語や最新のスキルなどを身に付ける機会を提供することで、将来的に必要となる人材を育てていこうという試みです。
まとめ
以上、リスキリングの詳細や、リスキリングとリカレント教育の違い、リスキリングを導入するメリットなどについて解説しました。
今後もリスキリングの必要性はどんどん高まっていくと予想されますし、リスキリングを導入する企業も増えていくでしょう。
DX化に対応し、業務の効率化を図りつつ採用コストも抑えたい場合は、なるべく早い段階でのリスキリング導入を検討するのがおすすめです。
- リスキリングとは、デジタル化した業務に対応するために必要となったスキルを、企業側が従業員に対して教育すること
- リスキリングとリカレント教育の違いは、「会社主導か個人主導か」・「働きながらの学習か休職・退職してからの学習か」という2点
- DX化が進む今、リスキリングの導入は積極的に検討すべき
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