「エンジニアが客先常駐で働くメリットやデメリットを知りたい」
「客先常駐に向いている人や向いていない人の特徴は?」
これからエンジニアを目指そうとしている方の中には、客先常駐という働き方がどんなもので、どういったメリット・デメリットがあるのか知りたいと考えている方も多いでしょう。
そこでこの記事では、以下のようなことについて詳しく解説していきます。
- 客先常駐とは何か
- エンジニアが客先常駐として働くメリット
- エンジニアが客先常駐として働くデメリット
- 客先常駐に向いている人・向いていない人の特徴
客先常駐とは

客先常駐とは、自社ではなくクライアント先企業へ出社して業務をこなす、という働き方で、以下のような方は基本的に客先常駐として働くことになります。
- SES企業のエンジニア
- 派遣会社に登録しているエンジニア
またフリーランスの場合も、案件内容によっては客先常駐で働くことがあります。
客先常駐における契約形態

客先常駐として働く際には、主に「準委任契約」「請負契約」「派遣契約」のいずれかの契約のもとで働くことになります。
それぞれの契約の特徴は以下の通りです。
契約形態
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指揮命令権
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成果物の納品義務
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準委任契約
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自社
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なし
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請負契約
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自社
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あり
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派遣契約
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常駐先企業
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なし
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このように、同じ客先常駐であっても契約形態によって働き方に差が出ます。
それぞれ、詳しく解説していきます。
準委任契約
準委任契約は、「労働力の提供」という形になるため、成果物の納品義務がありません。
したがって、プロジェクトの進捗状況の影響を受けず、納期間近であっても定時で帰ることができます。
どんなに忙しくとも、常駐先企業の方から「今日は残業してくれ」といった指示をすることはできないのです。
常駐先企業には指揮命令権がないので、もし残業や休日出勤の指示をして、それに従わせてしまうと違法になります。
なお、指揮命令権を持つ自社から残業や休日出勤の指示があった場合には、それに従う必要が出てくるケースもあります。
請負契約
請負契約の場合は、成果物の納品義務が発生し、納品が完了するまでは報酬を請求することができません。
したがって、納期間際には残業や休日出勤に対応しなければならないこともあるでしょう。
ただし、指揮命令権は自社にあるため、常駐先企業がエンジニアに対して残業を指示することはできません。
なお請負契約ですと、納品が終わった後も、成果物に瑕疵があれば修正を依頼されることがある上、最悪の場合損害賠償請求をされる可能性もあります。
派遣契約
準委任契約同様、労働力を提供するための契約であり、納品義務はありません。
ただし、準委任契約と違って指揮命令権は常駐先企業にあるため、派遣元ではなく常駐先企業の指示に従って業務を遂行することになります。
残業については、派遣されたエンジニアが36協定に同意していれば、法の範囲内で常駐先企業による残業指示が可能となっていますので、応じるべき場面も出てきます。
エンジニアが客先常駐として働くメリット

エンジニアが客先に常駐して働くメリットとしては、主に以下のようなものがあります。
- 人脈が広がる
- 残業が少ない
- 引き抜きの可能性がある
- 未経験でも採用されやすい
- 幅広いスキルを身に付けられる可能性がある
人脈が広がる
客先常駐という働き方をする場合、一つの職場に長年居付くことはあまりなく、定期的に職場が変わるのが一般的です。
そのため、いろいろな職場を経験し、その都度様々な人と知り合うことができるため、人脈を広げやすいというメリットがあります。
また、多くの企業の社風に触れることで、仕事に対して良い刺激がもらえるかもしれません。
残業が少ない
SES契約は「決まった時間内における労働力の提供」なので、SES契約で客先に常駐する場合、残業することはほとんどありません。
契約内容の例としては、「10時から19時まではそちらの職場であらかじめ決められた業務を行います」といった形です。
そのため、成果物の完成については義務を負わず、納期前でどんなに周囲が忙しく働いていようとも、SESエンジニアは定時で帰宅できます。
もし常駐先の企業が強制的に残業させると、違法になってしまうのです。
ただ、指揮命令権のことをよく理解していない企業の場合、違法となることを知らず、残業の指示を出してくるかもしれません。
そして、指示を受けるエンジニア側も、常駐先企業からの残業指示に従う必要はないことを知らないケースが多く、違法な残業が常態化していることもありますので、この点についてはご注意ください。
引き抜きの可能性がある
職場を渡り歩いていると、実力や働きぶりを認められ、その会社から好待遇での引き抜きを受ける可能性があるというところもメリットだと言えるでしょう。
後述しますが、客先常駐という働き方は自社から評価されづらいという特徴があります。
自社の社員たちが、客先でどのように働き、どういった活躍をしているのかについて、現場での働きぶりを知らない経営陣や上司たちが具体的に把握するのは困難だからです。
そのため、評価制度が整っていないことも多く、キャリアアップについてもあまり期待できません。
そう考えると、常駐先企業からの引き抜きというのは大変魅力的でしょう。
派遣元の企業との関係もありますので、そう頻繁にある例ではないでしょうが、「どうしてもこの人材が欲しい」と思ってもらえれば、引き抜きは充分にあり得ることです。
未経験でも採用されやすい
SESや派遣の場合、未経験でも採用されやすい傾向にあります。
なぜならば、SES企業や派遣会社はエンジニアを派遣することで収益を得ていますので、派遣できるエンジニアの数が増えるほど会社としての売り上げアップに繋がるからです。
こういった理由から、少しでも派遣できるエンジニアの頭数を増やそうとして、未経験者か経験者かを問わず、プログラミングスキルがあれば採用するという会社も少なくありません。
とりあえずエンジニアとして就職したい、と考えている方にはメリットと言えるでしょう。
幅広いスキルを身に付けられる可能性がある
客先常駐という働き方をしていると、定期的に職場が変わり、その都度案件に応じたスキルを身に付ける必要が出てきます。
そのため、いくつものスキルが身に付きやすいという特徴があります。
それぞれのスキルについて深堀りできないという弱点もありますが、いろいろなことを幅広く知っておきたいと考えている方にとっては好ましい環境でしょう。
エンジニアが客先常駐として働くデメリット

客先常駐という働き方には、以下のようなデメリットも存在します。
- 自社への帰属意識が芽生えにくい
- スキルアップできない環境で働く可能性がある
- 評価されづらい
- マネジメントスキルが身に付かない
- 人間関係のストレスに悩まされる
自社への帰属意識が芽生えにくい
客先常駐は、常にクライアントの職場で働く形式のため、自社に対する帰属意識が低くなりがちです。
自社の人間と会うのは、定例会のような形で月に一度だけ、といったケースもあるため、自社の人間なのに顔と名前が一致しない、ということも珍しくありません。
自社に愛着が持てないと、なんのために頑張っているのかわからなくなったり、組織の一員であるという意識を持てなかったりしてしまうことで、労働意欲の低下に繋がります。
仲間意識を持って働きたい人にとって、客先常駐はデメリットに思えてしまうかもしれません。
スキルアップできない環境で働く可能性がある
特にSES企業に勤めるエンジニアに言えることですが、スキルアップが望めないような現場に回されてしまい、エンジニアとして無駄な時間を過ごしてしまう可能性があります。
SESの場合、案件を選ぶことができず、会社から指示された現場へ行くしかない、というケースも多いです。
「何が出るかわからない」ということから、「案件ガチャ」と揶揄されています。

案件ガチャに外れると、どれだけ働こうともスキルアップが期待できないような役割を担当することになります。
「テスター」や「ヘルプデスク」のような開発に携われない仕事から何年も抜け出すことができない人も多いです。
もちろん、こういった仕事も重要ではありますが、エンジニアとしての成長を望むのならば好んで長期間やるべき仕事ではありません。
評価されづらい
客先の職場で働くため、自社の経営陣や上司は、現場で働くエンジニアたちの努力や活躍を具体的に知ることができないケースが多いです。
クライアイント企業から定期的にヒアリングしたとしても、それだけでは適切な評価を下せるほどの詳しい情報は手に入らないでしょう。
結果的に、待遇面での改善がされづらいというデメリットが生まれます。
マネジメントスキルが身に付かない
客先常駐の場合、あらかじめ決められた業務をこなすだけになってしまうことが多いため、マネジメントスキルが身に付きづらいというデメリットもあります。
エンジニアとしてキャリアアップしていくためには、マネジメントスキルは大変重要です。
プロジェクトリーダーとなって開発メンバーを率いたり、開発プロジェクトのトップであるプロジェクトマネージャーを担当したり、といったように、エンジニアたちをマネジメントできるようになることで、組織の中で出世していくことが可能となります。
テックリードのような技術に特化した存在になるという道もありますが、職場や案件が変わることの多い客先常駐という働き方の場合、特定の技術を究めるのが難しくなってしまうでしょう。
どんな職種においても、年齢を重ねるほどマネジメントスキルが求められる傾向にありますので、それが身に付かない環境にいることは将来的にマイナスとなってしまう可能性が高いです。
人間関係のストレスに悩まされる
案件ごとに職場が変わる客先常駐という働き方は、毎回新たな人たちと出会えるというメリットとともに、合わない人たちと仕事をしなければならなくなるというリスクもあります。
特に、人見知りだったり、仲間意識を持って同じメンバーと働きたいと考えていたりする人にとっては、コロコロと職場が変わる環境はストレスになってしまうでしょう。
せっかく仲良くなれて、仕事がやりやすくなってきた頃に案件終了となり、次の職場へ移動、ということの繰り返しに対して苦痛を感じる人は、客先常駐に耐えられない可能性が高いです。
客先常駐に向いている人の特徴

この項目では、客先常駐という働き方に向いている人の特徴について解説していきます。
主な特徴としては以下の通りです。
- コミュニケーション能力が高い
- 同じ環境で働くのが苦手
- 様々なスキルを身に付けたい
コミュニケーション能力が高い
頻繁に職場が変わることから、都度その環境に馴染むためのコミュニケーション能力を持っている人に、客先常駐という働き方は向いています。
職場の空気を読み、社風に合わせて振舞い、波風立てないようにする調和力や協調性があれば、どんな現場にいっても問題なく溶け込めるでしょう。
「人と喋ることが好き」「誰とでも仲良くなれる」というコミュ力の高い人には向いている働き方です。
同じ環境で働くのが苦手
人の価値観はそれぞれなので、「常に同じ場所・同じメンバー・同じ業務では飽きる」という人もいることでしょう。
その点「客先での常駐」という働き方ならば、各現場で環境が変わるため、定期的に新鮮な気持ちになって仕事に臨めるかもしれません。
通勤場所を変えたかったり、一緒に働くメンバーを変えたかったりといった願望を持っている方には向いていると言えます。
様々なスキルを身に付けたい
派遣された現場に応じて、必要となるスキルは変わってきます。
その都度勉強する大変さはありますが、その分多くのスキルが身に付くため、「幅広いスキルを習得したい」と考えている人には客先常駐が向いているでしょう。
運よく案件に恵まれれば、様々な開発工程を学ぶことができ、結果としてフルスタックエンジニアを目指すことが可能になるかもしれません。

もちろん、そう都合よくフルスタックなスキルが身に付く現場に派遣される可能性は低いので、ある程度案件を選べるような状況に身を置くことが重要です。
客先常駐に向いていない人の特徴

客先常駐に向いていない人の主な特徴は以下の通りです。
- 年収を上げたい
- 環境の変化が苦手
- キャリアアップしたい
年収を上げたい
客先常駐という形で働いていると、自社の上層部から自分の能力や実績を正確に把握してもらうのが難しいケースが多いです。
その結果、正当な評価を得られず、年収も上がりづらい傾向にあります。
また、単価の安い案件ばかりを抱えている会社の場合、そもそも会社自体に社員の給料を上げる経済的体力がないため、どれだけ努力しようと収入アップはほぼ期待できません。
年収にこだわりたい場合は、自社開発企業や、元請け(1次請け)・2次請けの受託開発を行っている企業で働くのがおすすめです。
環境の変化が苦手
定期的に働く環境が変わることを新鮮に感じる人もいれば、逆にストレスに感じる人もいるでしょう。
環境の変化に対してストレスを感じる場合は、客先常駐という働き方は向いていません。
同じ職場で、同じ仲間たちと長く働きたい場合は、客先常駐は避けた方がよいでしょう。
キャリアアップしたい
エンジニアとしてのキャリアアップを考えている場合も、客先常駐という働き方は向いていません。
常駐先企業で決められた業務をこなすだけ、という形が多いため、マネジメントスキルを身に付けるのが難しいですし、重要な仕事は常駐先企業の正社員しか担当できない、ということもよくあります。
キャリアアップに繋がる仕事がやりにくいというのも、客先常駐の負の部分です。
客先常駐として働くのは「やめとけ」「やばい」と言われる理由

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これは、この記事で解説してきた以下のようなことが原因になっていると思われます。
- 評価体制が整っていない
- 年収が上がりづらい
- マネジメントスキルが身に付かずキャリアアップしづらい
ただ、客先常駐で働くメリットもあるため、人によっては客先常駐の方が性に合っていることもあるでしょう。
メリットとデメリットを考慮して、自分に適している働き方を選ぶようにしてください。
まとめ

以上、客先常駐のメリットとデメリットや、客先常駐に向いている人・向いていない人の特徴について解説しました。
否定的な意見も多い客先常駐という働き方ですが、良いか悪いかは個人の価値観によるものですので、一概に「良い・悪い」を決めることはできません。
客先常駐のメリット・デメリットや、向き不向きを考慮した上で、客先常駐を選ぶか避けるかを判断していくとよいでしょう。
- 客先常駐という働き方には、「人脈が広がる」「幅広いスキルが身に付きやすい」「未経験でも採用されやすい」といったメリットがある
- 一方で、「年収が上がりづらい」「キャリアップが難しい」「人間関係のストレスを抱えやすい」といったデメリットが存在する
- 「客先常駐はやめとけ・やばい」という意見も多いが、どんな働き方が自分に合っているかは人それぞれ
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