「データサイエンティストの仕事内容は?」
「データサイエンティストになるために必要なスキルや知識って何?」
IT社会の発展にともないエンジニアを目指す方が増えている昨今ですが、データサイエンティストという職業についてよく知らない方も多いのではないでしょうか。
スマートフォンやAIロボット、IoT機器などさまざまな製品・サービスが作られることにより、現代では多くのデータを取得できるようになりました。
それと同時に、データを扱う人間が必要になるわけですが、それがデータサイエンティストという職種になります。
そこで今回は、データサイエンティストについて以下の内容をベースに解説していきます。
- データサイエンティストの仕事内容
- データサイエンティストに必要な知識とスキル
- データサイエンティストになるために役立つ資格
- 未経験からデータサイエンティストを目指す方法
データサイエンティストについてGoogleで検索すると、「やめとけ」「つらい」など否定的な言葉が出てきますが、現代のデータ社会においては需要が高いため将来性のある職種と言えます。
開発会社を運営しつつ、プログラミングスクールも運営している弊社が、データサイエンティストについて詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
データサイエンティストとは
データサイエンティストとは、収集したデータを分析し、企業の経営向上をサポートする職種です。
似たような職種として「データアナリスト」もありますが、データサイエンティストとの違いは以下の通りになります。
- データアナリスト:主にデータの収集と分析を行う
- データサイエンティスト:データアナリストの仕事に加え、課題の抽出や解決策の提案なども行う
2010年ごろまでは、データを収集する人や分析する人、統計にかける人など担当範囲ごとに仕事が分かれていましたが、ビッグデータの誕生によりデータを専門的に扱う人材が必要になりました。
そこで生まれたのが「データサイエンティスト」です。
しかし、実際の現場では厳密に線引きがされている訳ではなく、データアナリストや機械エンジニアなどがデータを取り扱うこともあり、企業によってはデータアナリストをデータサイエンティストとして雇用するケースもあります。
ここで理解すべき点は以下の2つですので押さえておきましょう。
- ビッグデータの誕生により、企業はデータを専門的に取り扱う人材が必要になった
- データを幅広く取り扱い、企業の経営戦略をサポートする役割を担うのがデータサイエンティスト
データサイエンティストの仕事内容
データサイエンティストは、ビッグデータの収集や分析だけでなく企業の抱える問題を解決できるような提案まで行うため、「データを活用すること」が重要な仕事になります。
ここでは、データサイエンティストの仕事を以下の4工程に分けて解説します。
- ビジネスにおける課題の抽出
- ビッグデータの収集
- 収集したデータの分析
- 分析結果をもとにした提言
ビジネスにおける課題の抽出
データサイエンティストがまず行うのが「ビジネスにおける課題の抽出」という作業です。
それは、莫大なデータを取り扱う前に企業の課題点を抽出しておくことで、効率の良いデータ収集・分析に移ることができるからです。
「課題の抽出」は、以下の3ステップで行われます。
- 課題を洗い出し、優先順位を付ける
- ターゲットにすべき課題と達成目標を明確にする
- 課題解決や目標達成のための仮説を立案する
今まではコンサルティングファームや企業の事業企画部が担当していた分野ですが、ビッグデータが関わるようになってからはデータサイエンティストの仕事とされることが多くなりました。
ビッグデータの収集
仮説検証のためにはデータ分析が必要ですが、その前に行うのが「ビッグデータの収集」です。
まずは、業務システムやSNSから分析のもととなるデータを収集するための環境づくりから行います。
- 業務システムからAPIを通じて取得したデータを収集するプログラム作成
- HadoopやMySQLを用いたデータベース構築と運用
上記のように、データサイエンティストはビッグデータを収集する前の設計部分も行います。
収集したデータの分析
データの収集が終えたら、「分析作業」に移ります。
分析作業はいわば、膨大なデータの中から仮設検証に使える「意味あるデータを見つける特定作業」と言えます。
特定に先立ち、必要に応じてデータの下処理である「データのクレンジングや加工」も行われます。
ビッグデータにはノイズが多く不適切な情報が含まれることがあるため、必要ないものは事前に削除したり、空欄を0で埋めたりといった対処をする。こういった作業を「データのクレンジング」といい、AIのデータ処理精度を向上させるために重要な作業となる。
データの分析が正しく行われなければ、その先にある仮設検証がブレてしまうため、重要な工程の一つとなります。
分析結果をもとにした提言
最後に、データの分析結果をもとに「ビジネス上の課題を解決するための提言」を行います。
ここでは、収集したデータの分析結果を伝えるだけではなく、そこから考えられる次の施策を具体的に伝えることが重要です。
例えば、商品に関するデータ分析を行い、「30代女性はこのような商品を多く購入する傾向がある」と分かったとします。
その場合、多く購入されている商品の特徴を押さえた商品開発を行えば、売上向上につながる可能性が出てくるでしょう。
このように、分析結果を整理しレポートにまとめて、その企業が抱えている問題の解決策や次に行うべき施策を提言します。
データサイエンティストに必要なスキル・知識
データサイエンティストに必要なスキルや知識は多いですが、大きく分けると以下のようになります。
- ビジネススキル
- ITスキル
- 統計分析スキル
- 機械学習
- 統計学
- ビッグデータ
- データ分析に使用されるツール
ただデータを収集し分析すればよいということでもないので、さまざまなスキルや幅広い知識が必要となります。
分析スキルさえあれば良いと思っていた人は、ここで確認しておきましょう。
必要なスキル
データサイエンティストに必要な具体的スキルは以下の通りです。
- ビジネススキル:論理的思考・課題抽出力・活動マネジメント・企画力
- ITスキル:プログラミングスキル(Python・R言語など)
- 統計分析スキル:数学・データ分析ソフトウェアのスキル・データサイエンス力
- プレゼン力:コミュニケーションスキル・ドキュメンテーションスキル
- コンサルティングスキル:提案力
データサイエンティストの仕事は、「どうすれば顧客の抱える問題を解決できるか」であり、分析データをもとに考え提案することが重要なため、顧客の市場や課題を把握し、問題点を抽出するなどのビジネススキルが必要となります。
例えば飲食店一つとっても、地元に根付いた店なのか、全国にチェーン展開する店なのかによって、戦略は変わってきます。
また、顧客の流入経路もSNSやホームページが中心なのか、看板や口コミのほうがメインなのか、扱う媒体によってはアプローチが異なるでしょう。
このような背景を考慮しつつ、専門的なスキルであるプログラミングスキルやデータサイエンススキルを活かすことで顧客の抱える問題をデータを用いて解決します。
ただし、顧客は人ですので、資料を使ったプレゼン力やコンサルティングスキルも必要となります。
「あなたが抱えている問題は◯◯ですが、そうなっている理由は△△です。現状データでは〜となっているため解決策にはこれが必要です」
このような的確で分かりやすい説明ができるとベストです。
必要な知識
データサイエンティストに必要な知識は以下の通りです。
- 機械学習
- 統計学
- ビッグデータ
- データ分析に使用されるツール
- 数学
- データ分析手法
データを正しく分析するにあたり、ベースとなるのが数学や統計学といった学問的知識です。
具体的には、確率・統計・微分積分・線形代数(行列)などの高校・大学レベルの知識が必要となります。
また、ビッグデータを処理するための特別技術に関する知識としては、Hadoopを中心としたHBase・Hive・pigを必要とすることが多いです。
これらを理解しておくことで、容量の大きいビッグデータでも蓄積や操作が可能となります。
その他、ビッグデータの効率的な計算が可能な分析ツール「SPSS」や、高速処理が可能な「列指向のデータベース」など、ビッグデータに関する技術は多くあるので、幅広い知識を身につける必要があります。
機械学習はPythonを使うことが多く、プログラミング言語Pythonをしっかりマスターしておく必要があります。
データサイエンティストの平均年収
データサイエンティストの平均年収についてのデータはいくつかありますが、調査媒体によって多少数値が変動します。
例えば「求人ボックス」の場合、以下のようなデータとなっています。
(データは、2023年7月5日時点のもの)
引用:求人ボックス
ご覧の通り、正社員の場合、データサイエンティストの平均年収は699万円と非常に高くなっています。
求人ボックスは、あのカカクコムが運営するサイトで、求人情報を一括検索できるサービスとなっています。
膨大な数の求人案件が載っているため、年収データについても信頼できるでしょう。
高い年収が目指せる分、未経験から目指すのが難しいという側面もありますが、転職に成功した時の恩恵が大きいのがデータサイエンティストという職種です。
未経験からデータサイエンティストを目指す方法
データサイエンティストとしての知識やスキルを何も持っていない初心者の方でも、将来性の高さや平均年収の高さを知り、目指したいと思うようになった方もいらっしゃるでしょう。
この項目では、未経験からデータサイエンティストになるにはどうすればいいのかについて解説していきます。
まずはプログラミングスキルを習得する
データサイエンティストになるには、まずプログラミングスキルを身に付けるのが最優先です。
PythonやR言語などを使うことが多いため、こういった言語の学習を徹底的に行いましょう。
独学でのプログラミング習得を目指すのならば、以下のようなオンライン学習サイトを利用するのがおすすめです。
- Progate
- ドットインストール
- paizaラーニング
併せて、書籍も活用していきましょう。
関連知識の習得
データサイエンティストは、プログラミングだけできればいいというわけではありません。
データ収集の具体的な手法やデータクレンジング、機械学習などの知識が必須となります。
こうした関連知識の習得も忘れずに実践してください。
企業研究
現場で活躍するための基本的なスキルを身に付けたら、次は企業研究です。
将来自分が働きたいと思える企業を、じっくりと探していきましょう。
ここを疎かにしてしまうと、もし就活が上手くいってその会社で働けることになっても、入社後にミスマッチを感じて苦しむことになってしまいます。
企業のカルチャーや展開しているサービス内容、入社した際に担当する業務内容、労働環境などについて、できる限り多くの情報を集めておくべきです。
例えば企業のカルチャーについては、公式ホームページやTwitter、実際に働いている人・働いていた人が書き込める口コミサイトなどを利用することで、ある程度まで知ることができます。
もし知り合いがその会社にいるようならば、直接聞いてみるのもよいでしょう。
なお、研究する企業については1社や2社ではなく、可能な限り多くの企業を調べるべきです。
未経験の場合、そう簡単に内定はもらえないため、少なくとも10社以上は受けるつもりでいなければなりません。
就職・転職活動
入社を希望する会社も絞れてきたら、いよいよ就職・転職活動です。
なお、就職や転職の活動は、企業研究と同時に行っても構いません。
そのあたりは、自分のやりやすい形を選択しましょう。
なお就活時に、特に重要になるのが「ポートフォリオ」です。
ポートフォリオとは、自身のスキルを証明するための成果物のことで、斬新なWebサービスやWebアプリを作ることができれば、転職活動を有利に進めることができます。
未経験の場合、ポートフォリオが最大の武器となるため、一切手を抜かずに、「誰にも負けない」と思えるほどの作品を作って転職活動に挑むようにしてください。
そしてポートフォリオだけでなく、面接対策や、履歴書・職務経歴書対策などもしっかり対処しておきましょう。
データサイエンティストになるために役立つ資格
データサイエンティストになるために役立つ資格としては、以下の4つが挙げられます。
- 情報処理技術者試験
- 統計検定
- データベーススペシャリスト試験
- G検定・E検定
資格取得を通して知識を深められるだけでなく、キャリアアップにも利用できるためおすすめです。
情報処理技術者試験
情報処理技術者試験とは、IPA(情報処理推進機構)が主催するIT技術者向け試験の総称で、データサイエンティストを目指すなら以下の2つがおすすめです。
- 基本情報技術者試験
- 応用情報技術者試験
基本情報技術者試験ではシステムの設計・開発や戦略立案などの基礎知識がメインに出題され、応用情報技術者試験ではITに関する応用的知識やスキルに加え、マネジメントや経営戦略に関する知識も問われます。
合格率は両方とも20%前後で難易度は高めですが、認知度の高い国家資格であるため取得する価値は高いと言えます。
統計検定
統計検定は、日本統計学会が認定する統一試験で5段階(準1級〜4級)のレベルで構成され、1級のみ「統計数理」と「統計応用」の2つの試験に分かれています。
2級は大学1~2年で学ぶレベルの統計学の知識とその応用力が問われる試験なので、専門的に勉強していない人は準2級の取得を目指すのがおすすめです。
難易度は上がりますが、準1級に合格すれば応用的な統計学の手法を理解しているという証明になります。
準1級と2級〜4級の合格率は以下の通りです。
- 準1級:約20%
- 2級〜4級:40〜60%
得られる資格は「統計調査士と専門統計調査士」の2種類があるので、統計学の知識があることを証明したい人は取得を目指すと良いでしょう。
データベーススペシャリスト試験
データベーススペシャリスト試験は、情報処理技術者試験と同様にIPA(情報処理推進機構)が運営するデータベースに関する国家試験です。
データベースの管理者や責任者育成を目的としているため、データベースの設計や管理に関する知識が問われます。
ほかの情報系資格と比較しても難易度は高く、合格率は約20%です。
データサイエンティストはビッグデータを蓄積するためにデータベースの設計や蓄積を行うため、取得する価値は高いと言えます。
上位資格であるため、キャリアアップしたい方は入念に勉強してから挑戦すると良いでしょう。
G検定・E資格
G検定・E検定は、一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA)が主催する試験に合格することで得られる資格です。
試験内容としては、AIの機械学習に必要なディープランニングの知識や技術について問われます。
G検定とE検定がおすすめな人の特徴としては、以下の通りです。
- AI分野の知識や技術をビジネスに生かしたい人
- データサイエンスについての幅広い知識を身につけたい人
- ディープランニングの知識を深めたい人
- ディープラーニングを実装するエンジニア
- AIシステムの開発に携わりたいエンジニア
データサイエンティストはディープランニングやAIの知識も必要とするため、取得する価値はあると言えます。
一般的にはG検定取得後にE検定を受験する方が多いため、まずはG検定に挑戦すると良いでしょう。
「データサイエンティストはやめとけ・つらい」と言われる理由
やめとけ・つらいと言われる主な理由は以下の通りです。
- タスクを複数こなす必要がある
- ミスをしないように細心の注意を払う必要がある
- 他部署から過度に期待されやすい
- 数学や統計学の知識が必要なので文系だと難しい
- プレゼンの見せ方を工夫しないといけない
- 正解や前例がないため試行錯誤が必要
ビッグデータという膨大な情報を分析して、企業の抱える問題を解決できるような施策を見出す仕事は決して容易なものとは言えません。
ミスをしないよう細心の注意を払いながら複数のタスクをこなすストレスは、他のエンジニアより高い可能性があります。
AIという最新技術に期待する人も多く、データ収集や分析が一瞬でできるものと勘違いされるケースもあるので精神的な負荷もかかるでしょう。
しかし、仕事量や注意量などは他分野のエンジニアでも同じくらいあるものなので、そこまで気にする必要はありません。
そして、データサイエンティストの需要は非常に高いものとなっています。
- AI技術の発達などでビッグデータの需要が拡大している
- 政府がデータサイエンティストの人材教育に力を入れている
- データサイエンティストはAIに代替されるリスクが低い
AIに代替されにくいどころか、AI技術の発達によりビッグデータの需要が拡大しております。
さらに人材不足問題も相まって、2019年に文部科学省が「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度」を始めました。
これは、データサイエンスやAIに関する知識や技術の向上及び学びの機会拡大を目的としています。
データサイエンティストは、まだまだ需要がある仕事で将来性も高いと言えるため、ネガティブな意見はあまり気にしないで良いでしょう。
その他、将来性のある仕事について知りたい人はこちらにまとめてありますので参考にしてみてください。
まとめ
今回の記事では、データサイエンティストの仕事内容や必要なスキルなどについて解説しました。
ビッグデータを扱うことから、「タスク量が多くて大変」と思われがちですが、IT系の職種であればそれほど大差ないと思われます。
むしろ、AIの発達に伴い需要は拡大しているため将来性のある仕事として認識しておくとよいでしょう。
- データサイエンティストは、ビッグデータの収集や分析を行うことで企業の抱える問題点解決のための施策を提言する仕事である
- 仕事内容は、課題の抽出・ビッグデータの収集・データの分析・分析結果をもとにした提言の4工程に分かれる
- 必要な知識やスキルには、機械学習・統計学・数学の知識、ビジネススキル・ITスキル・統計分析スキルなどがある
なお、弊社が運営するプログラミングスクール「RUNTEQ(ランテック)」は、未経験からのエンジニア転職に強いスクールで、特にWebエンジニアの育成に力を入れています。
未経験から学習を始めた多くの卒業生が、Web系開発企業へのエンジニア転職を成功させています。
データサイエンティスト同様、Webエンジニアの需要も非常に高いので、Web業界に興味があるという方は、是非一度無料キャリア相談会へお越しください。