「ブラックなイメージがあるスタートアップ企業だけど、実際どのような働き方をするのか知りたい」
「スタートアップの年収や、スタートアップに向いている人・向いていない人を知りたい」
スタートアップ企業に興味があるものの、「給料が安く労働時間が長い」といったネガティブなイメージによって二の足を踏んでいる方もいらっしゃるでしょう。
確かに、一昔前までのスタートアップは厳しい労働環境であることが一般的でした。
しかし最近では大幅に改善され、働き方も年収も大きく異なっています。
そこでこの記事では、現在のスタートアップでの働き方や年収事情を中心に、大企業とスタートアップとの違い、スタートアップに向いている人・向いていない人などについて解説していきます。
スタートアップとは
「スタートアップ」という言葉に明確な定義はないものの、一般的には、「革新的なアイデアやビジネスモデルで短期的な成長を目指す企業」のことを指します。
アメリカで使われ始めた言葉ですが、今では日本でも広く知られています。
少人数(場合によっては1人)で立ち上げ、資金調達がままならない状況の中でスピード感を持って商品やサービスの開発を行うのがスタートアップの特徴です。
リスキーではあるものの、成功した時の恩恵が大きいため、日本でも毎年多くのスタートアップ企業が誕生しています。
スタートアップで成功した代表的な企業は以下の通りです。
- メルカリ
- ラクスル
- Airbnb
- スマートニュース
ステージごとのスタートアップでの働き方
スタートアップ企業の成長ステージは、大きく分けて4つ存在します。
- シードステージ
- アーリーステージ
- ミドルステージ
- レイターステージ
ステージによって従業員数や会社資本、事業規模などが異なるため、当然働き方も変わってきます。
この項目では、それぞれのステージにおける働き方について解説していきます。
シードステージ
シードステージとは、その名の通り会社としてまだ種(シード)の状態のことです。
会社設立前の準備段階、もしくは設立直後なので、売り上げがないことに加え、信用もないため思うような資金調達ができず、金銭的に苦しむことが多いです。
事業計画書が評価されて銀行から融資を受けられたり、起業したばかりの会社に投資してくれるエンジェル投資家を見つけたりできればいいのですが、そう簡単にはいきません。
必然的に、経営者も含め、シードステージのスタートアップで働く人たちは薄給にならざるを得なくなります。
「自分の手取りを大きくするくらいなら、会社のために使いたい」と思うフェーズです。
労働環境もかなりブラックで、目標に向かってチーム一丸となり、早朝から深夜まで働き詰めということも多いです。
しかし、人によってはこういった時期を楽しいと感じることもあるでしょう。
「自分たちが作り上げたサービスが世に広まるかもしれない」
「GoogleやFacebookのように、世界的企業の創業メンバーになれるかもしれない」
このように夢を追える時期なので、朝から晩まで少ない給料で働こうとも、その先に待っている未来を想像しながらワクワクできるという人も少なくないはずです。
逆に、ビジネスライクに労働対価を求める人には向かないステージだと言えます。
アーリーステージ
会社設立からしばらく経った頃、もしくはサービスリリース直後の状態のことをアーリーステージと呼びます。
まだ売り上げはないので、資金的に厳しい状況が続いています。
しかし、サービスとして形になりつつあったり、既に形になっていることもあるため、それを担保に資金調達がしやすくなっているケースもあります。
働き方としては、シードステージ同様にブラックな環境であることが多いです。
給料が低いことはもちろん、残業代や福利厚生といった概念もなく、明るい未来を想像してひたすら頑張る、というステージです。
ミドルステージ
ミドルステージは、スタートアップとしての第3段階で、リリースした商品やサービスがある程度軌道に乗るステージです。
売り上げも見込めるようになったことで、金融機関から融資を受けたり、投資家から資金調達したりといったことがしやすくなるフェーズとなりますので、労働環境が改善されてくる時期でもあります。
人材を増やして負担を分散させたり、これまで頑張ってきたメンバーの給料を上げたりと、今までの苦労が報われる段階とも言えるでしょう。
レイターステージ
売り上げが損益分岐点を超え、今後も事業が伸びていくという展望がある最終段階がレイターステージです。
この頃には、ビジネスモデルも人材も安定していますので、今後どのようにビジネスをスケールしていくかというフェーズとなります。
働き方としては、スタートアップならではの自由さを残しながら、給料面でも一般的な企業と同等かそれ以上になっていることが多いです。
長時間労働のイメージがあるスタートアップですが、最近ではそんなことはなく、定時で退社するという人が多い企業も珍しくありません。
特に、EXIT(出口戦略)としてIPOを目指している場合は、コンプライアンスの遵守が求められるため、勤怠管理についてはシビアになります。
- タイムカードの記録と実際の労働時間が合っているか
- 残業代の発生しない「サービス残業」はないか
- 未払いの残業代はないか
- 社会保険に適切に加入しているか
こういった部分が厳しくチェックされるため、労働環境は極めてホワイトです。
スタートアップ企業と大企業の働き方の違い
エンジニアとして働く場合に、スタートアップ企業と大企業ではどのような働き方の違いがあるのか気になる方も多いでしょう。
大きく違うのは、以下の4つの点です。
- 働く時間の自由度
- 服装の自由度
- 経営者や上司との関係
- 仕事の範囲
働く時間の自由度
スタートアップと大企業で最も違う部分は、働く時間を自分でコントロールできるかどうか、という部分でしょう。
大企業の場合、基本的には出勤時間と退勤時間が決められており、時間通りに行動しなければなりません。
例えば、朝9時に出社して夕方5時まで会社にいなければならない、といった形です。
しかしスタートアップの場合には、そういった縛りがないことが多いです。
完全なリモートワークに対応している会社もあれば、コアタイムなしのフレックス制といった働き方を許容している会社もあります。
服装の自由度
大企業の一部では、勤務中の服装についてだいぶ緩くなってきている会社もあります。
とはいえ、あくまで「オフィスカジュアル」の範囲内であり、それなりにフォーマルな服装をしなければなりません。
「カジュアルOK」と言われても、ジーンズを履いていけばひんしゅくを買ってしまいます。
しかしスタートアップの場合、服装に関しては完全に自由であることが非常に多いです。
Tシャツにジーンズ姿でも問題ありませんし、金髪にしてもいいですし、ヒゲを生やしてもいいですし、サンダルを履いて出社しても何も言われないというスタートアップもあります。
顧客への挨拶回りなどの際にはスーツ着用を求められることもありますが、通常の業務をこなしている時は服装について注意を受けることはほとんどないでしょう。
経営者や上司との関係
スタートアップは、基本的に少数精鋭で構成されているため、同僚との仲間意識が強い上、上の立場の人間ともフランクに付き合えます。
大企業の場合、年功序列による上下関係が厳しいことが多く、上司に対して言いたいことを言えずに我慢する、という状況も決して少なくないでしょう。
ましてや、経営者に対して直接意見するなどもっての外のはずです。
しかしスタートアップならば、上司や経営者との距離が近いため気軽に意見することができますし、実際に自分の意見や考えがサービス開発に反映されるということもあります。
仕事の範囲
大企業では、各々担当する仕事が細かく割り振られていて、その管理体制もしっかり整っています。
専門外の仕事を任されるようなこともありません。
逆にスタートアップの場合は、とにかく人材が少ないため、専門外の仕事も担当することが多いです。
例えば、エンジニアとして開発をしながら、事務作業や電話応対といった雑務をこなしたりする、といったような形です。
また、スキルに見合わない大きな仕事を任されることもあります。
上の人間としても、まだ実力不足であることがわかっていても人材不足のため任せざるを得ないのです。
ただ、そういう厳しい環境にいるおかげで成長するスピードが速くなりますし、若いうちからマネージメントの仕事を任されることもあります。
早い段階でいろいろな経験が積めるというのは、後々大きな財産となります。
スタートアップの給料事情
スタートアップと聞くと、「薄給」という言葉が思い浮かぶかもしれません。
しかし、最近では事情が変わってきています。
東京商工リサーチの発表によると、2021年度(21年4月期-22年3月期)における上場企業3,213社の平均給与が約605万となっています。
参考:上場3,213社 平均給与605万5,000円、2018年度に並びこの10年で最高 ~ 2021年度「平均年間給与」調査 ~ : 東京商工リサーチ
そしてスタートアップですが、日経新聞の調査によって以下のような数字が出ています。
スタートアップが優秀な人材確保に向けて待遇改善に動いている。日本経済新聞社がまとめた2021年の「NEXTユニコーン調査」では、2020年度の平均年収は上場企業の平均に匹敵し、21年度は630万円と5%(29万円)増える見通しだ。
引用:日本経済新聞
2021年度の上場企業の平均年収が約605万円だったのに対し、同年度のスタートアップの平均年収は約630万円という結果が出ています。
しかも、スタートアップのメンバーの多くは20~30代です。
上場企業の社員の年齢層はもっと上である可能性が高いため、「若い人材がメインであるスタートアップの方が、上場企業より平均年収が上」ということになります。
実際に、メルカリで執行役員、SHOWROOMで最高執行責任者(COO)を務めた唐澤俊輔氏も、このような意見を発信しています。
上場企業とスタートアップの平均年収がほぼ同等まできたという記事。
ここで忘れちゃいけないのは、
・上場企業の平均年齢は40歳強
・スタートアップなら30歳強(恐らく)
という違いが隠れてること。上場企業は年功序列と考えると、若者にとってはスタートアップ一択では?https://t.co/LoRZQZYauY pic.twitter.com/k4H8s7RjJi
— 唐澤 俊輔 Almoha COO / デジタル庁 人事・組織開発 (@karacchi_) December 8, 2021
前述したように、シードステージやアーリーステージにいるスタートアップの場合には、薄給で激務という状況もあり得ます。
しかしミドルステージ以降であれば、上場企業をしのぐほどの年収も期待できるようになってきているので、収入面を心配してスタートアップを避ける必要はないでしょう。
スタートアップで働く魅力
スタートアップで働く主な魅力には、以下のようなものがあります。
成長できる環境
スタートアップは少数精鋭で構成される集団であり、一人ひとりに任される仕事が多く、責任も重くなります。
身の丈に合わない難しい仕事を振られることも珍しくありません。
こうした厳しい環境で日々鍛えられるため、通常の企業で働くよりも遥かに早いスピードでスキルアップできます。
少しでも早く成長したいという上昇志向の強い人には最適な環境でしょう。
転職時に給料が上がりやすい
スタートアップは資本的に不安定なことが多く、一般的な企業と比較すると倒産する割合が高くなってしまいます。
しかし仮に倒産してしまったとしても、スタートアップで培ったスキルや経験は無駄になりません。
無駄どころか、普通の企業で働くよりも遥かに成長スピードが速いので、同年代の人材よりも高いスキルを持っていることがほとんどです。
そのため、転職先を探しやすい上、スキルを買われて高い年収を提示される可能性も高いです。
企画段階から参加できる
サービス開発の花形である「企画」ですが、エンジニアとしての経験が浅いうちは、企画段階からサービスに関われるということはほとんどありません。
しかしスタートアップならば、メンバーの一人ひとりが即戦力として期待されているため、企画の案出し段階から参加できることも多いです。
上流工程から開発に加わるという貴重な経験を積めるのも、スタートアップならではの魅力です。
人間関係で悩みにくい
スタートアップは、社員が一丸となって働く環境が一般的であるため、上下関係にあまり厳しくなく、社長に対しても気軽に意見を言える場合も多いです。
同じ目標に向かって進んでいる仲間という意識が強く、出世競争のために同僚を蹴落とそうとしたりするような文化はありません。
そのため、パワハラや職場いじめといったことが起こりにくい職場環境となっています。
いじめなんかしている暇がありません。事業に関して意見が割れることはあるかもしれませんが、一人一人が事業を伸ばしたいと思うが故の衝突です。
スタートアップに向いている人・向いていない人の特徴
近年のスタートアップ企業には、労働環境面や年収面に関して多くの魅力があり、就職先・転職先として人気が高まってきています。
しかし残念ながら、スタートアップに向いている人もいれば、向いていない人もいます。
以下に、スタートアップに向いている人と向いていない人の特徴をまとめましたので、自分の性格や考え方とマッチしているかどうか参考にしてください。
向いている人の特徴
- 上昇志向が強い
- 勉強が好き
- 好奇心が強い
- 厳しい上下関係が苦手
- 学歴などにコンプレックスがある人
エンジニアである以上、スキルアップのための学習は重要なのですが、スタートアップの場合は特に顕著で、求められるレベルのスキルに追いつくため、終業後の隙間時間や休日を活かしての日々の勉強が欠かせません。
また、最新技術を取り入れるためには流行に敏感でなければなりません。
そのため、好奇心の強さも重要になってきます。
新しい知識やスキルを吸収するためにプライベートな時間を使うことが苦にならないという人は、スタートアップで働くエンジニア向きのタイプと言えるでしょう。
また、学歴など過去の経歴にコンプレックスがある人も、スタートアップで一気に経験値を積むことで、経歴を逆転することができます。
向いていない人の特徴
- 勉強が嫌い
- 仕事よりもプライベートを重視したい
- コミュニケーションが苦手
- 変化を嫌う
スタートアップに向いていない人の最大の特徴は、「勉強が嫌いなこと」です。
仕事は仕事、プライベートはプライベート、ときっちり分けて、プライベートな時間は自由に遊びたいと考えている人には厳しいでしょう。
仕事が終わった後も、「スキルを高めるために勉強したい」と自発的に思えるようなマインドが必要です。
また、決められた仕事以外はしたくなかったり、会社の成長に応じて働き方が変わったりといった変化を嫌う人も、あまり向いていません。
スタートアップでは、変化に対して柔軟に対応することが求められます。
まとめ
以上、スタートアップ企業での働き方や、大企業との違い、スタートアップに向いている人・向いていない人などについて解説しました。
- 近年、スタートアップ企業の労働環境は大幅に改善されている
- 年収についても、上場企業の平均を超えるほど高い
- 成長のために日々学習することが苦ではない人はスタートアップ向き
記事中でも紹介した通り、将来を考えると、これからエンジニアを目指すのならばスタートアップ一択と言っても過言ではない状況ですので、適性がある方は積極的にスタートアップへの就職・転職を検討してみてはいかがでしょうか。
スタートアップの働き方に不安を感じる人は、スタートアップの働き方を赤裸々に語った書籍「「エンジニア×スタートアップ」こそ、最高のキャリアである」がおすすめです。
このほかにもスタートアップ企業に関する知識を手に入れられる書籍を以下の記事に15冊厳選してまとめました。
「スタートアップには興味はあるけれども、なかなか踏み出すのが怖い….」という人は、以下の記事を読んでスタートアップの知識をつけてから行動してみるのもおすすめです。