「SES企業で働くメリットとデメリットを知りたい」
「どんな人がSES企業に向いている?」
SES企業については、肯定的な意見と否定的な意見とで真っ二つに分かれています。
「簡単に正社員になれるからおすすめ」と言う人もいれば、「ブラックだからやめとけ」と言う人もいて、どの意見を参考にしていいかわからないと困っている方も多いことでしょう。
そこでこの記事では、SES企業で働くメリットとデメリットについて詳しく紹介していきますので、SES企業へ就職すべきかどうかの判断に役立ててください。
また、SESに向いている人の特徴や、SESの将来性についても解説します。
SES契約とは
エンジニアを目指す方や、エンジニアとしてすでに働いている方の多くが、SESという言葉を耳にしたことがあるかと思われますが、SESが「準委任契約」という契約形態の一つを指すということを知らない場合も多いのではないでしょうか。
したがって、SESのメリット・デメリットを解説する前に、前提知識としてSES契約が他の契約形態とどう違うのかについて説明します。
それぞれの契約形態の違いを理解することで、SESのメリットやデメリットがより深く理解できるので、是非ご覧ください。
派遣契約との違い
SES契約と派遣契約の大きな違いは、「指揮命令権がどこにあるか」という点です。
SES契約の場合、指揮命令権は「SES企業」にあるため、SESから派遣されたエンジニアに対してクライアント企業側が指揮命令をすることができません。
例えば、残業や休日出勤の要請などが指揮命令に当たります。
しかし派遣契約の場合は指揮命令権がクライアント企業にあるため、派遣されたエンジニアに指示を出すことができます。
SES企業からクライアント企業へエンジニアが派遣されるため、派遣契約と似たようなものかと誤解している方も多いようですが、命令を下せる権利者が異なる、という部分で大きく違います。
請負契約との違い
SES契約と請負契約の大きな違いは、「クライアントは何に対して報酬を払うのか」という点です。
SES契約は、労働力の提供に対して報酬を受け取るため、派遣したエンジニアがどのような成果を出そうとも報酬には影響しません。
契約で決められた時間分だけエンジニアが働けば契約履行となります。
逆に請負契約の場合は、成果に対して報酬が支払われます。
つまりどれだけ働こうとも、成果物の納品が完了していなければ報酬は発生しないのです。
また、請負契約ならば納品した成果物に問題があった時に賠償責任を負いますが、SES契約の場合は、善管注意義務さえ果たしていれば携わった業務に何か問題があっても責任を問われません。
この点も代表的な違いと言えるでしょう。
なお、請負契約もSES契約同様に指揮命令権は派遣元にあります。
委任契約との違い
SES契約は「準委任契約」です。
「準」と付いているため、「委任契約」との違いが気になるという方もいるかもしれません。
しかし、準委任契約と委任契約の違いは単純で、「法律行為が伴うかどうか」という点だけです。
法律行為が伴うのが委任契約、伴わないのが準委任契約となります。
エンジニアが法律行為を行うことはまずあり得ませんので、特に気にする必要はないでしょう。
エンジニアがSES企業で働く5つのメリット
エンジニアがSES企業で働く主なメリットは、以下の5つとなります。
- 未経験でも正社員として採用されやすい
- 大きなプロジェクトに参加できることがある
- 残業時間が少ない
- 人脈が広がる
- スキルの種類が増えやすい
未経験でも正社員として採用されやすい
IT業界は、慢性的な人材不足の状態に陥っています。
だからこそ、必要な時に必要な人材を調達できるSES企業が数多く存在し、重宝されているのです。
そして、人材を派遣する側であるSES企業においても、エンジニアが不足していることが多いです。
SESは、エンジニアを派遣することで利益を得るため、いわば「エンジニア自体が商品」とも言えます。
商品がなければ商売ができませんので、SES企業は日常的に正社員の募集をしていることが多いのです。
そして、案件はあるのに派遣するエンジニアが足りない、と困っているSES企業は、未経験であろうとも積極的に採用している会社もたくさんあります。
したがって、アルバイトや派遣社員ではなく、どんな会社でもいいから早く正社員として働きたいという未経験者の場合は、SES企業を狙うのがもっとも近道となるでしょう。
大きなプロジェクトに参加できることがある
SES企業によっては、大企業が発注元となっている大規模なプロジェクトを案件として抱えているところもあります。
そういったSESで働くことによって、本来ならば駆け出しや未経験では到底加わることができないようなプロジェクトに参加できるかもしれません。
大きなプロジェクトのチームメンバーになれれば、学べることもたくさんあることでしょう。
また、優秀なメンバーが集まっている可能性も高いので、他のエンジニアから刺激をもらいながら大幅に成長できる機会にもなるはずです。
残業時間が少ない
SESのエンジニアの場合、クライアント企業の現場で働く前に、SES側とクライアント側とで派遣するエンジニアの労働時間に関する契約を結びます。
したがって、派遣されたエンジニアは、あらかじめ決められている労働時間を超える勤務をすることがありません。
契約上、クライアント側から「納期前で忙しいから残業して欲しい」といったような要請をすることができず、基本的には定時での退勤となるからです。
SESのエンジニアが残業するのは、指揮命令権を持つSES企業側から残業の指示があったような場合に限られます。
そのため、基本的には決まった時間に帰ることができるので、プライベートな予定も立てやすいですし、スキルアップのための学習時間の確保もできます。
これは大きなメリットと言えるでしょう。
ただし、これはホワイトなSES企業の場合です。
属しているSES企業やクライアント企業がブラックだった場合、逆に残業や休日出勤が異常に多い、といった悲惨な状況になることもあります。
この点については、デメリットの項目で詳しく解説します。
人脈が広がる
SES企業に勤めるエンジニアは職場が固定ではなく、いろいろな会社の職場に常駐して仕事をする、という形式です。
そのため、多くの人と出会うチャンスに恵まれるというメリットがあります。
いろいろな人と出会えれば、それだけ人脈を広げられる可能性も高まるでしょう。
人脈を広げておけば、転職や起業を考える際など、いざという時に役立ちます。
スキルの種類が増えやすい
SESのエンジニアは、新たな現場へ派遣された際に、直前まで常駐していた現場で磨いたスキルが使えるとは限らず、まったく違う言語や環境での開発となることも珍しくありません。
人によってはこの点をデメリットと捉えるかもしれませんが、言い換えれば、現場が変わるたびに新たなスキルを習得せざるを得ないことにより、どんどん保有スキルが増えていくとプラスに考えることもできます。
派遣された直後は学習が大変かもしれませんが、多岐に渡るスキルを身に付けることでエンジニアとしての価値を高められることでしょう。
ただし、以前の現場で得たスキルを錆びさせないための努力も必要になります。
エンジニアがSES企業で働く5つのデメリット
メリットだけでなく、SES企業で働くことにはデメリットが発生することもあります。
主なものとしては、以下の5つです。
- 給料が低くなりやすい
- 案件ガチャに外れるとスキルを伸ばせない
- 不当な残業を要求されることがある
- 人間関係の構築が面倒
- 自社への帰属意識が薄くなる
給料が低くなりやすい
SES業界は、多重請負が常態化しています。
元請けや2次請けだけでなく、3次請けや4次請け、ひどい場合は5次請け以下という深い階層にいるSES企業も存在します。
階層が深くなるほど、途中で手数料が引かれてしまうため、会社に入るお金は少なくなります。
そして、そのしわ寄せはエンジニアにくることになり、入社した時点の給料が低い上に昇給もあまり期待できない、という状態になってしまいます。
多重請負のリスクを把握し、4次請けや5次請けといった案件をメインにしているようなSES企業は避け、元請けや2次請けメインのところを選んだ方がよいでしょう。
案件ガチャに外れるとスキルを伸ばせない
SES業界がブラックだと言われてしまう原因の一つが、「エンジニア側が案件を選べないことも多い」という部分です。
会社から指示された現場へ行くしかないということが珍しくなく、その現場がほとんどスキルの身に付かないようなところであっても働くしかないのです。
どんな現場に派遣されるかわからないことから、「案件ガチャ」と揶揄されています。
ガチャに当たればいいですが、外れてしまうと、無駄に数か月~数年を費やすことになってしまうため、その後のキャリアパスに悪影響を与えてしまいます。
不当な残業を要求されることがある
メリットの項目で触れましたが、本来SES契約に沿って働くエンジニアは、残業時間が少ないのが通常です。
クライアント側には指揮命令権がないため、SES企業から派遣されたエンジニアに対して「納期が近いから今日は残業してほしい」といったことを要求することはできないからです。
しかし、このことを知らないエンジニアも多いため、ブラックなクライアントやSES企業の場合、法令違反を承知でエンジニアに残業の要請をしたり、SES企業との暗黙の了解の上で堂々と違法な残業を強要したりしています。
また、クライアント自体もSES契約に詳しくなく、無自覚で法令違反をしてしまっている、というケースもあります。
人間関係の構築が面倒
様々な職場で働くことにはメリットもあるものの、その都度最初から人間関係を構築し直さなければならない、というデメリットもあります。
「コミュニケーション力」や「協調性」といったソフトスキルが高い方は問題ありませんが、人見知りするタイプの方や、コミュニケーションにあまり自信がないという方の場合、職場環境の変化は大きなストレスに繋がってしまうでしょう。
自社への帰属意識が薄くなる
SES企業のエンジニアは、基本的にほとんど自社の社員たちと顔を合わせることがありません。
会うとすれば、月に一度の定例会か、歓送迎会などの特別な催しがある時に限られることがほとんどです。
そのため、自社への帰属意識が薄くなってしまい、孤独を感じやすくなったり、今の会社より条件が良いところがあればいつでも転職しようと考えたりするようになりがちです。
また、帰属意識が薄いことにより、自社に対して誇りを持てなくなり、その結果仕事にやりがいを感じにくくなってエンジニアとしてのパフォーマンスが落ちるという懸念もあります。
SESを利用する企業側のメリットとデメリット
ここまでは、SES企業で働くエンジニア向けのメリットとデメリットを解説してきましたが、この項目では、SESのエンジニアが派遣されるクライアント企業側のメリットとデメリットについて紹介していきます。
「そんなことは働く側にとって関係のないことだ」と考えるエンジニアの方もいるかもしれませんが、自分たちが働くクライアント企業側にどんなメリットやデメリットがあるのかを知っておくことで、仕事に向き合う姿勢に変化が現れるかもしれませんので、是非把握しておいてください。
クライアント企業側のメリット
クライアント企業側がSES契約によって得られる最大のメリットは、「必要な時に必要な人材を容易に確保できる」ということです。
多くのIT企業が人材不足に頭を悩ませていますが、SES企業を利用すれば、人手が足りないプロジェクトに対してすぐにエンジニアを補充することができます。
自社で採用活動を行ったり、採用した新人を育てるための研修制度を整えたりしようとすると、どうしてもコストが嵩んでしまいます。
コストを抑えつつ迅速にエンジニアを確保できるという点で、SESはIT業界で重宝されています。
クライアント企業側のデメリット
クライアント企業にとって、SESサービスの利用はメリットだけではありません。
SES企業から派遣されたエンジニアは、成果物の完成義務がないため、他のエンジニアに比べて「何が何でも納期までに間に合わせよう」という意識が低い場合があります。
そういったエンジニアがチームに混ざることで、他のエンジニアたちに悪影響を及ぼす可能性があります。
また、エンジニアの当たりはずれがあるという点も見逃せないでしょう。
同じSES企業でも、所属しているエンジニアのスキルレベルはまちまちですので、経験豊富でスキルの高いエンジニアもいれば、採用したばかりの未経験エンジニアもいます。
売り上げ確保のために、SES企業側がスキルレベルをごまかして未経験エンジニアを派遣するような例もあるようです。
SES企業に向いているエンジニアの特徴
以下のようなタイプの人は、SES企業に向いていると言えます。
- ソフトスキルが高い
- 正社員として働きたい
- 定期的に職場を変えたい
ソフトスキルが高い
SESエンジニアは働く現場が変わりやすいため、ソフトスキルが高い人には向いていると言えるでしょう。
ソフトスキルの例としては以下の通りです。
- コミュニケーション能力
- リーダーシップ
- 協調性
- 発想力
- 問題解決能力
- 学習意欲
- 共感力
このように、特定の現場に限定されない、持ち運びできるスキルを多く持っている人は、どんな現場に派遣されても力を発揮できるので、SES企業にも適応できるはずです。
正社員として働きたい
SES企業は、未経験エンジニアであっても積極的に採用するという特徴があります。
SES企業にとってエンジニアは商品であるため、できる限り多く商品を揃えたいという考えが働きやすいから、というのがその理由です。
そのため、未経験であろうと、きちんとプログラミング学習をして一定のポートフォリオを示せるようであれば、正社員として採用される可能性が非常に高いです。
できるだけ早くエンジニアとして正社員採用されたいと考えている人には最適でしょう。
定期的に職場を変えたい
同じ職場で働くのではなく、定期的に働く場所が変わる方がいいという方にも、SESが向いています。
毎日同じ仲間・同じ場所で仕事をするという環境にマンネリを感じるという人もいるでしょう。
SESならば、一定期間働くごとに職場が変わることが多いため、いろいろな場所で働くことが可能となります。
SES企業に将来性はある?
SES企業への就職を考えているエンジニアとって、「SESに将来性はあるのか?」という点は非常に気になるところでしょう。
まず、SES企業自体は今後も需要があるはずです。
その最大の理由は、「プロジェクトの規模によって必要となるエンジニアの数が大きく変わる」からです。
小規模なプロジェクトの時は少人数でいいですし、大規模になれば多くのエンジニアが必要となります。
しかし、プロジェクト単位ごとに毎回人材を採用したり解雇したりするわけにはいきません。
そこで便利なのが、SES企業の存在です。
SES企業のエンジニアをいつでも利用できるという前提であれば、プロジェクトの規模が大きいようならば派遣を依頼し、不要であれば自社内で回す、ということが可能になるわけです。
こういった事情から、SES企業自体は今後も需要があるでしょう。
だからといって、SES企業で働くエンジニアに将来性があるかというと、また話が変わってきます。
これまで解説してきた通り、SESにも様々な種類があり、多重請負の下層にいてブラック化している会社の場合ですと、エンジニアが「ただの消耗品」として扱われてしまう可能性もあります。
長年SES企業で働くことを前提とするのならば、エンジニアのキャリア形成にも配慮している企業を選ぶようにすべきでしょう。
まとめ
以上、SES企業で働くメリット・デメリットを中心に、SESに向いている人の特徴や、SESを利用する企業側のメリット・デメリットなどについて解説してきました。
人によって「アリかナシか」の意見が分かれるSES企業ですが、契約形態や業界の構造的な問題などすべて把握した上で、それでもメリットの方が大きいと感じるのならば、自分の価値観に従ってSES企業を選択するのもよいでしょう。
ただ一般的には、キャリアアップや給料面のことを考慮すると自社開発や受託開発の方がよいという風潮がありますので、どういった会社を選ぶかについては慎重に検討してください。
- SES企業で働く主なメリットは「未経験でも正社員になりやすい」「大規模プロジェクトに参加できる」「残業が少ない」「人脈が広がる」「スキルの種類が増えやすい」という点
- SES企業で働く主なデメリットは、「給料が低い傾向にある」「案件に恵まれないことがある」「不当な残業を強いられることがある」「定期的に職場が変わるのでその都度人間関係の構築をやり直す必要がある」「自社への帰属意識が薄くなる」という点
- メリットとデメリットを比較し、自分にSES企業が合うかどうかをじっくり検討すべき
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