「Pythonのフレームワークとして代表的なものは何?」
「それぞれのフレームワークの特徴は?」
これからPythonエンジニアを目指そうという方、もしくは現役のPythonエンジニアでこれからフレームワークについても学んでいこうと思っている方の中には、上記のような疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、Pythonのフレームワークとして人気のある8つを厳選しつつ、それぞれの特徴について詳しく解説していきます。
Pythonのフレームワークに興味のある方は、是非参考にしてください。
フレームワークとは
フレームワークとは、サービスを開発するために必要な機能があらかじめ用意されている枠組みのことで、開発の土台となるものです。
開発の際、ゼロからコーディングしていくとかなり労力や時間がかかってしまいますが、フレームワークを活用することで大幅に作業を短縮することが可能となります。
なおフレームワークには、言語ごとにいろいろな種類が存在します。
各フレームワークによって用途や機能が異なるため、効率的に開発を進めるには、開発目的に応じた適切なフレームワークを用いることが重要となります。
もちろんPythonにもフレームワークがあり、主に「Webアプリケーション開発向け」と「機械学習・ディープラーニング向け」に分かれます。
Pythonのフレームワークを利用するメリット
Pythonでの開発作業でフレームワークを利用する主なメリットは、以下の通りです。
- 開発効率が上がる
- メンテナンスしやすい
- セキュリティの向上
- バグが発生しづらい
開発効率が上がる
フレームワークを利用することで、エンジニアがゼロからプログラミングする必要がなくなるため、効率的な開発が可能となります。
フレームワークには、様々なテンプレートや実用的なライブラリなどが含まれています。
したがって、本来ならば何日もかかる開発作業を短時間で終わらせることもできるようになるのです。
結果的に工数も減らせるため、開発コストを大幅に下げることもできます。
無駄を省いて効率よく開発作業を進めるために、フレームワークは欠かせない存在と言えるでしょう。
メンテナンスしやすい
開発作業は、一般的に複数人で同時に行います。
しかし、それぞれのエンジニアが自由にコードを書いてしまうと、同じサービスを開発しているはずなのに書き方がバラバラ、ということが起こってしまいます。
こういった現象が起こりますと、メンテナンスをする際に大変手間がかかってしまうでしょう。
しかしフレームワークを活用することで、土台となる機能やテンプレートなどを用いて開発を行うことができるため、コードの統一化を図ることが可能となります。
コードが統一されていれば、その後のメンテナンス作業も楽になるため、保守にかかる労力やコストを抑えることに繋がります。
セキュリティの向上
フレームワークには、実績ある信頼性の高い機能が実装されています。
多くの入力を受け付けるようなWebアプリケーションの場合、セキュリティホールが生まれやすくなるというリスクありますが、フレームワークには最初から一定のセキュリティ対策が盛り込まれているため、エンジニア自らが最初から書くソースよりも安全性が高いと言えるでしょう。
バグが発生しづらい
どんなにスキルのあるエンジニアであっても、ゼロからプログラミングをするとなると、スペルの入力を間違ったり基本的な部分でうっかりミスをしたり、といったことが起こりがちです。
人間は必ずと言っていいほどミスをするものですので、仕方がないことでもあります。
そして、そういった単純なミスが原因で予期しないバグが発生してしまう可能性があり、バグ修正に時間を取られてしまうことも珍しくありません。
しかしフレームワークを利用すれば、あらかじめ正しく書かれているソースコードをベースとして使うことになるので、人為的なミスによるバグが発生しにくくなります。
Pythonのフレームワークを利用するデメリット
Pythonで開発を行う際にフレームワークを用いることには、基本的にメリットの方が多いものですが、以下のようなデメリットも存在します。
- 学習コストがかかる
- カスタマイズが難しくなる
学習コストがかかる
開発において非常に便利なフレームワークではありますが、上手く活用するには、Pythonのスキルとは別に、用いるフレームワークについてもある程度学習する必要があります。
どのようなクラスやライブラリがあるのか、どのような場面でどう実装するのか、といった点について知らなければ、開発の際に活かすことができません。
Pythonという言語だけでなく、フレームワークについても別途学習が必要となる点はデメリットとなってしまうでしょう。
特に市場規模があまり大きくないフレームワークの場合、学習するための材料が少なく、場合によっては英語のドキュメントしか参考にできるものがない、ということもあり得ます。
後述する「Django」や「Flask」といったメジャーなフレームワークならば、利用している人も多いためQ&Aサイトで質問することもできますし、日本語のドキュメントも多いので学習はしやすいかと思われます。
カスタマイズの自由度が下がる
安全性が高く、コードの統一化が図られているため保守性も高いフレームワークですが、その分細かなカスタマイズができず、あらかじめ用意された機能を使うしかない、という点もデメリットとなります。
したがって、汎用的な処理ではなく特殊な処理をしなければならない場合には、フレームワークを使わずエンジニア自身がコーディングした方が良いというケースもあります。
【Webアプリケーション開発向け】Pythonのおすすめフレームワーク6選
Pythonのフレームワークは、大別すると「Webアプリケーション開発向け」と「機械学習・ディープラーニング向け」に分かれます。
この項目では、PythonにおけるWebアプリケーション開発向けのおすすめフレームワークを6つ厳選して紹介します。
Django
出典:https://www.djangoproject.com/
■Pythonのフレームワークとして最も有名かつ人気がある
■開発に必要な機能が数多く実装されているフルスタックフレームワーク
■大規模な開発に向いている
■学習するための書籍やWebサイトが豊富
■大人数が同時に利用するようなサービス開発に最適
Djangoは、Pythonのフレームワークとして最も人気があり、多くの開発現場で採用されています。
多数の機能があらかじめ用意されており、ユーザー認証やサイトマップ、各種フォームの作成、管理画面の自動生成、RSSフィードといった機能についてはプログラミングする必要がなく、Djangoに実装されている機能をそのまま使うことができます。
Pythonのフレームワークの中では一番有名ということもあり、書籍やWebサイトでの情報収集がしやすく、Q&Aサイトで質問もしやすいため、学習を進めやすいというメリットもあります。
なお、大規模なサービス開発に向いているという特徴もあり、以下のような有名サービスもDjangoで作られています。
- YouTube
- Spotify
- Dropbox
- mozilla
Flask
出典:https://flask.palletsprojects.com/en/2.3.x/
■必要最低限の機能が実装されているマイクロフレームワーク
■機能が少ないため学習コストが低い
■軽量で小回りが利くため小規模な開発に最適
Flaskは、Djangoとは逆で「必要最低限の機能」を実装したマイクロフレームワークとなります。
機能が絞られている分、小規模なアプリ開発をしたい時に、スピード感を持って達成するにはうってつけのフレームワークとなります。
また、Pythonのフレームワークの多くはデータベース機能が含まれていますが、Flaskはシンプルさを追求したフレームワークであるため含まれていません。
しかし、多くの拡張機能に対応しているため、データベースなど不足している機能については簡単に追加実装可能です。
Tornado
出典:https://www.tornadoweb.org/en/stable/
■同時に複数の接続処理ができる非同期フレームワーク
■多くのユーザーが長時間接続するようなサービス開発に向いている
■日本語ドキュメントが少ないため学習コストがやや高い
Tornadoの大きな特徴は、非同期通信とノンブロッキングネットワークI/Oにより、同時に多数の接続を効率的に処理できることです。
これにより、リクエストに対する「受付」と「処理」を必ずしも同時に行う必要がなく、別々で対応することができるため、同じタイミングで大量のアクセスがあっても問題なくさばくことが可能となります。
Bottle
出典:https://bottlepy.org/docs/dev/
■必要最低限の機能が実装されているマイクロフレームワーク
■「1ファイルのみで導入可能」というPythonのフレームワークとしては最もシンプル
■Flaskよりもさらに簡易的なアプリ開発向き
Bottleは、Pythonのフレームワークとしては最も軽量なもので、「bottle.py」という1ファイルのみで構成されています。
同じマイクロフレームワークである「Flask」よりも軽く、そして速いという特徴があります。
ルーティングや組み込みサーバーといった最低限の機能しかないため、ある程度規模の大きなWebアプリを開発する場合には他のPython用フレームワークを選択肢に入れた方がよいでしょう。
Pyramid
出典:https://docs.pylonsproject.jp/projects/pyramid-doc-ja/en/latest/
■Djangoほどではないものの「フルスタックフレームワーク」に属する
■小規模から大規模な開発まで利用可能
Pyramidは、Djangoほど多くの機能は持っていないものの、必要に応じて機能を追加してフルスタックにもできる柔軟性を持つフレームワークです。
拡張性が高いという特徴があるため、小規模な開発から大規模な開発までフレキシブルに活用できます。
web2Py
出典:http://www.web2py.com/
■セキュリティ面を重視したフレームワーク
■Windows・Mac・Linuxなど様々なプラットフォーム上で動作可能
web2pyの最大の特徴は、「セキュリティ面に強い」という点です。
SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティングの防止といった機能が備わっていることで、悪意ある攻撃も未然に防ぐことができます。
また、クロスプラットフォーム対応となっているため、WindowsやMac、Linuxといった様々なOS上で問題なく動作します。
【機械学習・ディープラーニング向け】Pythonのおすすめフレームワーク2選
次に、機械学習・ディープラーニング向けのPythonのおすすめフレームワークを2つ紹介します。
機械学習とディープラーニングの違いについてわかりづらいという方もいらっしゃるかもしれませんが、簡単に説明しますと、「機械学習を発展させたものがディープラーニング」となります。
機械学習・ディープラーニング向けのおすすめフレームワークは以下の通りです。
TensorFlow
出典:https://www.tensorflow.org/?hl=ja
■機械学習向けにGoogleが開発したオープンソースのフレームワーク
■Python以外の言語でもフレームワークとして使用可能
■利用者たちのコミュニティが活発
TensorFlowは、Googleが開発したオープンソースで、Pythonだけに限らずC言語やC++、Javaなどでも利用可能なフレームワークとなっています。
Googleが開発したフレームワークということもあり、注目度も高く、利用者たちによるコミュニティが活発であるという特徴があります。
そのため、情報交換や質問などがしやすい環境にあり、何かわからないことがあっても解決しやすい環境にあると言えるでしょう。
高速な数値計算を得意としているフレームワークですので、好んで採用する現場も多いです。
Pytorch
出典:https://pytorch.org/
■Facebookが主導して開発したディープラーニング向けのフレームワーク
■柔軟なニューラルネットワークによりデバッグやモデル設計の際に有利
■Pythonのライブラリである「Numpy」の扱い方と近い
Pytorchは、FacebookがAI研究の一環として、ディープラーニング向けに開発を主導したフレームワークで、従来は研究者に人気がありました。
しかしその人気は徐々に広がりつつあり、AI開発の領域で用いられることが増え、コミュニティも徐々に活発化しています。
処理が高速であることも魅力で、本来時間のかかるディープラーニングが、ニューラルネットワークにより短時間で完了するため、今後もAI開発の現場では重宝されることでしょう。
まとめ
以上、Pythonの代表的なフレームワークを8つ厳選して紹介してきました。
開発を効率的に進めるためには、フレームワークの利用は必須と言えます。
学習コストはかかるものの、その分身に付けたスキルはPythonエンジニアとしての財産になりますし、特に多くの現場で採用されているDjangoの習得価値は非常に高いと言えるでしょう。
今後も伸びていくと予想されているAI開発ですが、AI開発に多く用いられる言語がPythonです。
したがって、Pythonのフレームワークについても学習しておくことは大変重要であるため、言語だけでなくフレームワークについても併せて学んでいくことをおすすめします。
- Pythonのフレームワークとして最も人気があるのはDjango(ジャンゴ)
- Webアプリ開発か、機械学習・ディープラーニングかによって用いるフレームワークが異なる
- 効率的な開発作業のためにフレームワークの利用は必須なので、積極的に学習すべき